ハバナ、パラナ、パッパラパー
昔の日記
くーばのはなし
おい、ロクな仕事ってなんやねん
「キューバはこうだった」という文言は(マジもう本当)つまらない。しかし、一言で表すならば(表すことが許されるのであれば)とにかく「ゲバラが街に溢れている代わりに物がない国」だ。 医者は多いが薬がないのだ。
キューバで一番面白かった記憶は、場所に限らずいつも「 外国人が勘違いする」場面である。 普通は普通ではないと教えてくれる良き反面教師である。 キューバでもそうだ。 外国人の中に勿論私も含まれてはいるけれど、 そういう経験は既に恥のパワーで意識の外に蹴り飛ばしてある。
毎日朝8時から郵便局でデータが購入できるから、だいたい7時半から人が集まり始める。その時のキューバ人達は、 データを買うために列を作るなどということはしない。彼らはミリタルを知らない。(おいおい、いいのかそんなこと言って)ただし順番は待つ。 到着したら待ち人全員に誰が最後に来たか聞き、 その人の顔を覚えてから、各々好きな場所で待つ。
その仕組みが分からないのが外国人だ。
最高だったシーンは、列を作らず待っている人間たちに対して「 こんなのおかしい。アメリカでは…」を繰り返す「 そういうタイプ」の集団が喚いている場面であった。 勿論現地からは総スカンを喰らっていたので、 私はあんな風にはなりたくないと思わせてくれた。私の人生には必要な人間達だったのかもしれない。そう、 white saviorsは私が白人化しないように私を救ってくれたのだ。 皮肉の上に皮肉を被せた話である。
しゃんはい
直属の上司から盗撮されていると気が付いたのは仕事を始めて丁度 一年が経った頃だった。2018年秋頃の話だ。
その頃は確か月1〜2回海外出張をこなし、外国の現場を周り「 優秀そうな新卒」を演じていた。「 私が優秀だから外国に出してくれている」 と勘違いしていたのである。幸せな勘違いであることよ。 出張経費たち、ごめんな。お前たちは、結局のところ、 写真撮影代だと思うよ。
よい給料、スタンプで埋まっていくパスポート、貯まるマイル、 ファーストクラスのラウンジ入場券は私の勘違いを加速させた。 飛行機のご飯をシーフードに変更設定するのが一番の楽しみの、 本当に手の施しようのない人間である。
上海でも面白い人間に会う。今回は日本人である。 どこかの建機リースの海営部長だ。 宴会場に連れてきていた5年目くらいの若手を叱り飛ばしていた。 理由はタクシーである。2人は勿論一緒のホテルだから、 若手は部長と一緒に帰ろうとしたのである。
しかし、その部長様は「 俺は偉いんだから一緒に乗るなんて何を考えているんだ」 というやんごとなき論を持っていた。他人の考えることはよく分からない。 日本社会にはそういう決まりでもあるらしい。 喚く彼の横顔を見ながら、人は偉くなるとこうも横暴になり、 自分に特別感を感じるのかと感心していた。
人間は元来そういうものだ。いつの間にか「会社名」 とか「役職」とか「国籍」が自分の名前の盾になる。 自分の名前だけで戦えなくなる。でも、 それは長い競争と努力の果てに獲得したあなたのトロフィーである場合もある。 わかる。わかるよ。わかったふりかもしれない。
しかし、20代になっても大学名で戦おうとする同級生を軽蔑し、 過去の武勇伝を喋り散らかす老齢の先輩方に飽き飽きし、 そんな親を持つ子供,たちを憂うのが癖の私は、これからも変わらないかもしれない。ここで「精神的に向上心のない者はばかだ」と断罪する気はない。 話の核にあるのは向上心ではない。 私もあなたも持っている粘着質の優越感だ。
ここらへんだったか?
日本逃亡計画を始めるのだった。場所はどこでも良い。 メキシコにでもしておこうか。
ぶらじる
2019年2月、上司を人事に引き渡す仕事を終えた。
警察には伝えなかったし、お金も要らなかった。 早く逃げたかった。無かったことにする上層部、 社会とはなんたるかを説き続ける私より40歳しか違わない人間達 、昔はもっと大変だったと語るCSR室に鎮座するシンボリックな女性室長、3週間に一回の頻度で流れるセクハラ関連のニュース、 司会者の隣で静かに佇み、笑うときには口元を抑えるアナウンサー。
会社を辞める前に新しい上司から「 こんなに経験させてもらって辞めるのは迷惑だ」 という主旨の有り難いお言葉をいただいた。 時間を遡ってその人の顔面に向かって叫び倒したい。
「私の!人生に!迷惑が!かかったんだげんちょもない!」